「ピアノは私の一部」〜池田先生インタビュー
ピアノ講師・池田先生に、これまでの音楽人生と、これからのレッスンに込める思いについてお話を伺いました。
● ピアノとの出会いは、お姉さんのレッスンから
「最初のきっかけは、姉のピアノレッスンについていっていたことでした。小さい頃から母に連れられて通っていたので、自然と『私もやりたい!』と思うようになって。両親は音楽とは無縁でしたが、教養の一環として始めさせてくれたんです。」
姉の演奏を聴いて育ったこともあり、自然と音に親しみを持ち、早い段階で音感が育まれたと言います。
● 作曲と連弾の思い出
「小学生の時に、年に一度、作曲した曲を発表するコンサートがありました。毎年1曲、自分で作るんです。一度、偉い先生に『いいね』って言っていただいたことがあって、姉と連弾したことが印象に残ってます。」
その経験から、創作の大変さと楽しさ、そして「私は作るより弾く方が好き」という自身の気持ちにも気づいたと話します。
● 音楽の道を本格的に意識した転機
広島で育った池田先生。中学2年生のとき、お父様の転勤で東京へ行くかどうかを決めるタイミングがありました。
「ピアノを本気で続けるなら東京が良いと先生たちにも勧められて。ピアノが得意でしたし、それを追求したいと思ったんです」
そうして東京へ。音楽高校に進み、当初は周囲のレベルの高さに悩みながらも、芸大の先生について学びを深め、少しずつ自信を取り戻していきました。
● 芸大受験の挫折、そしてドイツ留学へ
東京芸大との受験では実技に合格しながらも最終選考で落選。悔しさを胸に、ミュンヘン音楽大学へと道を切り開きました。
「講習会で知り合った教授に気に入っていただいて『是非勉強に来ないか』声をかけてもらい、本当に運命のような出会いでした。先生との信頼関係が重視される入試制度にも惹かれました。」
個性や自分の考えを大切にするドイツでの演奏スタイルが合っていて、音への考え方も変化したと言います。
● 教えることへの喜びと大切にしていること 〜「自分で選ぶ力」を育てたい
帰国後、池田先生は指導の道に力を入れています。中でも大切にしているのが「生徒の個性を尊重すること」と「自分で考えて選ぶ力を育てること」です。
「ピアノって、ただ楽譜を読んで音を出すだけじゃないと思うんです。そこに“どう弾きたいか”という気持ちがあることで、はじめて音楽になる。だから私は、レッスンで“この部分はどう弾きたい?”と必ず聞くようにしています。でも、最初から答えられる子は少ないんですよね。」
そうした時、池田先生は3〜4通りの弾き方を自ら演奏してみせ、生徒に選んでもらいます。
「“どれが好き?”って聞くと、みんな目を輝かせて“これがいい!”って答えてくれるんです。それだけでもすごく嬉しい瞬間。でも本当は、いつか『私はこう弾きたい』って、最初から自分で言えるようになってほしい。」
そのためには、小さな頃から「自分で考えて選ぶ」という経験を積み重ねることが大切だと池田先生は言います。たとえ正解が一つではなくても、感じたこと、考えたことを自分の言葉で伝えられること。それが音楽の原点であり、生きる力にもつながっていくと信じているのです。
● 「違っていい」を体感するレッスン
池田先生が留学先のドイツで強く感じたのは、「同じ曲を弾いても、生徒によって教え方が変わる」ということでした。
「日本だと、いわゆる“正しい演奏”というのが一つあるような感覚で、それをみんなで目指す感じがありますよね。でも、ドイツでは生徒によって教え方もアプローチも全然違うんです。」
同じ先生に習っていても、Aさんにはこう、Bさんにはああ、と指導が変わる。その柔軟さと、生徒一人ひとりの“音”を尊重する姿勢に、深く感銘を受けたと話します。
「今、私が教える側になって思うのは、どの子にも“その子らしい音”があるということ。それを見つけて、引き出してあげるのが、私の役目だと思っています。」
池田先生のレッスンでは、決まった正解をなぞるのではなく、自分で音を見つけ、音楽を自分のものにしていく体験ができます。
生徒にとっても、それは「自分らしくいていいんだ」と感じられる、安心で豊かな時間になることでしょう。
人生経験を経た大人の方なら、音楽を通じて自分らしさを再発見する時間になるのではないでしょうか。
● これからについて
「今は教えることがとても楽しくて、私に向いているんじゃないかなって思うんです。もちろん演奏も続けていきますが、子どもたち一人ひとりの“その子らしさ”を伸ばす指導をしていきたいですね。もちろん大人の方も大歓迎です。」
池田先生のまっすぐな音楽への思いと、温かく自由なレッスンスタイルは、多くの生徒の心を豊かにしてくれるはず。これからも、音楽を通じて子どもたちの可能性を広げていってくれることでしょう。