「やっぱり音楽が好きだった」〜岩崎聖大先生インタビュー
子どもから大人まで幅広い世代にヴァイオリンを教えている岩崎聖大先生。今回は、これまでの音楽人生と、教えることへの思いについてお話を伺いました。
● ヴァイオリンとの出会いは、4歳のころ
「兄が2人いるんですけど、2人ともヴァイオリンを習っていて。僕も自然と“やりたい”と言って始めました。最初は完全に“おけいこ事”でしたね。」
習い始めた頃は練習もほとんどせず、「辞めよう」と思ったことも何度もあったとか。でもなぜか不思議と続いていたそうです。
● 中学1年、人生を変えた“衝撃の演奏”
「2007年、テレビでチャイコフスキー国際コンクールの優勝者の神尾真由子さんの演奏を見て…雷に打たれたような衝撃を受けたんです。“この人みたいになりたい!”って強く思って。そこからは完全にスイッチが入りました。」
ソリストを目指したいと親に相談すると、家族も全面的に応援。そこから本格的に音楽の道へ向けての準備が始まります。
● 苦しみながらも、なぜか続けてこれた
それまで習っていた先生からは「プロ志望の生徒を教えるタイプではない」と新しい師匠を紹介されることに。ところが、最初のレッスンでは“スケールって何?”、“エチュードって人の名前?”という状態だったという岩崎先生。
「無謀な生徒だったと思います(笑)。でも“やれるところまでやってみよう”って言ってくださって…本当に感謝しています。」
無事合格した音楽大学付属高校進学後は回りのレベルの高さに打ちのめされ、比較のなかで何度も挫折しそうに。「もうヴァイオリンやめます」と先生に泣きついたことも。
「でも先生に“逃げるな”って言われて…自分でも不思議だけど、やっぱりヴァイオリンが好きで続けてるんです。これしかやれることがないって、どこかで思ってたのかもしれないですね。」
● 教えることへの目覚めと葛藤
「大学では教育実習にも行って、“あれ?教えるの、意外と好きかも”と思うようになったんです。」
その後、音楽教室で指導経験を積み、指導法に本格的に興味を持つように。
「自分がプロとしてやってきたことと、初心者に教えることって、まったく違うんですよ。フェラーリを一般人に渡して“運転してみて”って言うようなもので。そこに気づいたとき、衝撃でした。」
そこから、指導法のセミナーを受け、右手・左手・読譜力という「三大要素」に分けて考えるメソッドや、子どもの発達段階に応じた教え方などを徹底的に学び直したそうです。
● レッスンで大切にしていること
「僕の教育理念は、“楽しく基礎力を身につける”こと。楽しく演奏するためにも基礎力がなんといっても大切ですが、ヴァイオリンって本当に難しい楽器なので、失敗も含めて楽しめるレッスンを心がけています。」
子どもにとっては、身体の使い方ひとつでも大きな負担になりうるため、姿勢やフォームの繰り返し練習も欠かせません。ただし、厳しいだけでは伝わらないことも多いため、ユーモアや対話も忘れずに取り入れているとのこと。
「大人の方も多いんです。40代、50代から始める方もいて。年単位でゆっくり進むけど、それもまた素晴らしい挑戦です。音楽は生活を豊かにしてくれますから。」
● コーヒーと音楽、どちらも“手間ひま”が楽しい
「毎朝、豆から挽いてコーヒーを淹れるのが趣味なんです。お湯を注いだときに“ブワッ”と膨らむのがもう最高で…」
そんなリラックスタイムを大切にしながら、岩崎先生は日々のレッスンや演奏活動に取り組んでいます。
「子どもでも大人でも、“難しい”を“楽しい”に変えてあげられるように、これからも指導の引き出しを増やしていきたいです。」
遠回りした経験、悩んだ日々があるからこそ、生徒の気持ちに寄り添える。そんな先生がそばにいてくれるレッスンは、きっと特別な時間になるはずです。
岩崎先生の深みのあるレッスンと、あたたかくてちょっとユニークな人柄。どちらも、音楽を学ぶ人の心をじんわりと満たしてくれる力を持っています。